医師一家の生前対策

homeへ戻る
13のテクニック

テクニック1
節税効果が高い不動産への組み換え

キャッシュのままでは相続税が高額に……不動産なら節税の手段もさまざま

 キャッシュはその額面がそのまま相続財産評価となってしまうため、節税効果はゼロです。資産に高額のキャッシュがあり、相続税が心配だという人は、別のもっと節税効果の高い資産に換えて持つのが、節税の点からは有利になります。

 ただし、何でもかんでもキャッシュを減らせばいいかというと、それも危険です。なぜなら、キャッシュがないと困る場面もあるからです。たとえば、相続人が相続税の納税資金として使える分の現金が残っていないと困ります。あるいは、あなたが老後を生きていくための生活費も必要でしょう。

 まずは、将来的にどれくらいのお金が必要になるかをシミュレーションしてみることが大事です。そして、最低限必要なキャッシュは手元に確保しておき、余力のある分を別の資産に組み替えていくことを考えましょう。

①キャッシュを不動産に換える

 節税効果の高い資産としては不動産があります。土地は基本的に路線価で評価します。路線価は毎年変わるものの、土地取引の指標となる公示地価(地価公示価格)のおよそ8割程度の価格となることが多いようです。したがって、1億円で買った土地は相続時には8000万円くらいの評価になるということです。キャッシュを土地に換えるというごくシンプルな対策をしただけで、約2割の資産圧縮ができることになります。

 建物については、固定資産税評価になります。1億円の家なら建てた瞬間から6000万円とか7000万円くらいに下がります。そして、時間が経つほど資産的価値が落ちて、評価が低くなっていきます。

 タワーマンション節税というのを耳にすると思いますが、これも不動産を使った節税テクニックの一つです。

 マンションは一つの土地にたくさんの住戸が立っています。住戸一戸あたりの土地の専有面積が狭いので、都心の地価の高い地域にあっても評価への跳ね返りが少なくなります。さらに、これまでは低層階でも高層階でも固定資産税評価額は同じでした。市場人気の高い高層階を買っておけば、相続のときには評価額が低くてお得になり、いざ売却や賃貸をするときには高く売れたり貸したりできてお得という、W効果があったのです。

 ただ、あまりにもタワーマンション節税が流行したために、国はタワーマンションの評価額の見直しに取りかかり、2018年頃には中層階を基準として高層階は評価を高く、低層階は評価を低くする方向で検討を始めました。しかし、2020年には東京オリンピックもありますし、海外から日本へ移住してくる外国人も増えています。資産的価値という意味でも所有するメリットは大きいでしょう。資産家にとっては、タワーマンションは今後も引き続き、大きな節税策になることは変わりません。

 土地の評価について、もう少し突っ込んだ話をすると、土地を評価するときは、その土地の現状に合わせて補正を行います。

 たとえば、いびつな形で使いづらい土地とか、道路がなくて不便な土地は、そのマイナス面をカバーするために何らかの手立てが必要になるでしょう。いびつな土地を有効活用するには、建物の形やデザインを工夫しなくてはなりませんし、場合によっては使えない余白の土地が出るかもしれません。道路のない土地の場合は、そのままでは建物を建てることができない(建築基準法で、建物は道路に接していなければならないとされている)ので、土地の一部を道路として提供しなくてはなりません。そうすると、100%活用することができないわけですから、その分、評価も下げないと不公平になるでしょう。

 土地を評価するときは、きれいな四角い形で、適度な広さで、周辺の状況も問題なしの〝完璧な土地〟を100%としたとき、当該土地にどれくらいマイナス面があるかを鑑みて、評価に反映させていいことになっているのです。

 参考までに、よくある補正の適用地のパターンのいくつかを挙げておきましょう。

  • 間口の狭い土地(いわゆる旗竿地)
  • 道路幅の狭い土地(幅員が4メートル未満の土地)
  • 道路に接していない土地
  • いびつな形の土地
  • がけ地・傾斜地
  • 土地の上を高圧線が通っている
  • 線路や高速道路のそばにあって、騒音や振動が激しい土地
  • 道路より極端に高い・低い位置にある土地
  • 墓場やごみ処理場など、多くの人が嫌う土地(忌み地)
  • 敷地内に神社や祠などが立っている土地
  • 縄伸び・縄縮みの大きい土地(登記されている面積よりも実際の面積が広かったり、狭かったりする)
  • 広すぎて使い道が限られる土地(広大地)

 実際の実務では、これ以外にも補正の対象はいろいろあります。また、補正率はマイナス面の度合いなどによって違ってきます。個別の判断になりますが、目安としては、不整形地だと路線価はすぐに2〜3割下がります。広大地は、要件が厳しく判定が非常に難しいですが、適用されれば最大で65%減できます。

 現実には、100%の完璧な土地などほとんど存在しませんから、たいていの土地には補正がかけられることになります。土地の評価というのは本当に微妙で、10人の専門家がいれば10通りの評価額が出るといわれます。基本的には土地は路線価で評価するのですが、実際の実務ではいろいろな駆け引きがあり、路線価以外の評価基準を使ってやる方法もあります。補正の適用や評価のしかたを変えるなどのさじ加減で、評価は高くも安くもなるのです。

 自分の土地にどれだけの補正がかけられるか、路線価以外の評価基準で行うのが適正かなどは素人では判断が難しい部分ですので、不動産に詳しい税理士や不動産鑑定士などに依頼するといいでしょう。うまくいけば、思いもかけない大幅な評価減ができるかもしれません。

 ちなみに、相続税を納税してしまった後でも、5年以内であれば、申請すれば納税しすぎたお金の還付が受けられます。過去には、5000万円が還付で戻ってきたケースがありました。

②土地を人に貸す、賃貸物件を建てる

 何も建物が立っていない更地は、そのままにしておくより、建物を建てたり人に貸したり駐車場にしたりなど、何かに活用するほうが評価は低くなります。なぜなら、人が住んでいるとか、借り手がついているとか、倉庫が立っているとかすると、それ以外の目的に使うことが難しく、更地に比べて活用範囲が限られるため評価が下がるのです。

貸地の評価

 人に貸している土地(貸地)の評価は、「土地の評価額×(1−借地権割合)」で計算します。借地権というのは、土地を借りている人の権利のことです。地域ごとに借地権割合は異なりますが、一般には60%くらいです。高いところになると80%という場合もあります。

 仮に、8000万円の土地を借地権割合60%で貸すと、3200万円の評価に下がります。

貸家建付地の評価

 賃貸アパートや賃貸マンション、貸テナントなどの賃貸物件が立っている土地(貸家建付地)の評価は、「土地の評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で行います。借家権割合はほとんどの地域で30%と決められています(一部地域では40%)。

 8000万円の土地に賃貸アパートを建てたとすると、借地権割合60%の地域として、6560万円の評価です。更地に比べて、18%のダウンになるのです。

 多くの資産家が節税目的で賃貸物件を建てるのは、この効果を狙ってのことです。しかも賃貸物件からは家賃収入も得られるので、土地の有効活用としても好まれます。

 ただし、賃貸不動産の経営にはリスクもあります。アパートを建てても入居者が入らなければ、家賃は入ってきません。その一方で、修繕やメンテナンスなどの維持費はコンスタントにかかってきます。入居者同士や周辺住民とのトラブルに対処したり、トラブルが起こらないように気を配ったりなどの苦労もあります。

 そして、もし相続時に半分にしか入居者がいなかった場合は、貸家建付地の評価減も土地の2分の1にしか適用できません。節税効果は薄いものになってしまいます。

 賃貸物件を建てることは節税の観点からは非常に魅力的ですが、必ずしも経営的に成功するとは限りませんので、慎重に検討する必要があります。

 被相続人のお金で建てた賃貸物件を贈与するという方法であれば、医業の妨げにならず相続財産も減らすことができて一石二鳥かもしれません。

③自宅をリフォーム、リノベーションする

 キャッシュを不動産関連に換えるアイデアとして、自宅のリフォームやリノベーションをするという手も有効です。

 老後のためにバリアフリーにするとか、安全に暮らすために耐震性を上げる改修をするとか、奥さま孝行としてシステムキッチンを入れ替えるといったことが挙げられます。リフォームやリノベーションの規模にもよりますが、ある程度まとまった額のお金を使うことになるでしょう。しかも、その費用は無駄に消えるわけではなく、家族の住み心地を良くして喜んでもらえるのですから、生きたお金の使い方といえるのではないでしょうか。

 住み心地の良い家になると、家としての価値が上がって固定資産税評価額が上がってしまうのではと気になるかもしれませんが、これは心配無用です。外観が大きく変わったり、家の構造自体が変わるなどしない限り、評価への影響はまずありません。

④海外資産でリスクの分散をする

 かつてはシンガポールや香港など外国の口座に預金を移して相続財産を減らし、相続税を節税するという方法が多く採られていましたが、今は難しくなっています。5000万円以上の海外資産については国への報告義務があるためです。

 相続税や所得税から逃れるために海外移住をする人も増えています。ただし、平成27年7月1日からは海外移住する場合にも「出国税」が課されることになりました。1億円以上の株式を持っている人については、保有株式の含み益に所得税が課されます。また、海外移住が形のうえだけで生活の実態が日本にあると見なされると、相続の際は日本のやり方で相続税が課されます。

 それでも現預金や不動産は国内のみで所有するのではなく、海外でも所有しておくことをおすすめします。なぜなら、日本の国そのものが破綻してしまう可能性もゼロではなく、大きな地震や津波などで不動産を失うこともあるからです。資産を外貨で持っておいたり、地質学的に安全な国に不動産を買っておいたりするほうが安全でしょう。

 知り合いの開業医には、ステイタスとしてドバイに別荘を買った人がいます。また、永世中立国であるスイスでは「自分の身は自分で守る」という意識が徹底していて、地下に核シェルターがあると聞きました。核戦争の恐怖を考えると、そういうところに家を買っておくのも選択肢の一つかもしれません。

 私の友人にスイス人のプライベートバンカーがいますが、スイスで投資用不動産を中心に資産家向けの事業を行っています。一つの賃貸物件に対して法人をつくり、90%の株式を投資家が持ち、10%の株式を彼が持ちます。そうしておいて、彼が賃貸物件の管理を行うのです。物件の一部が彼の財産でもあるわけですから、当然、利益を上げるために彼は一生懸命、管理を頑張ります。日本にいながら海外の賃貸不動産経営をするのは、仲介業者が入居募集を怠るなどの手抜きをしていても気づけなかったりして難しい面がありますが、こうしておけばリスクを減らせます。

 金を資産として持つのと同様に、ワインを資産として持つ人もいます。ワインが好きな人にとってはコレクションも兼ねた投資ができるので、特にヨーロッパでは人気があります。国内にこだわらず世界に目を向ければ、いろいろな投資やユニークな資産の持ち方、活用法などがあります。節税というより財産を失うリスクを分散するという意味で、海外資産を持っておくのが理想的です。

13の相続対策チェックシート 無料ダウンロードPDF

キーワードで検索

ex) 医師、相続、資産、テクニック、フィナンシャル

Page Top