医師一家の生前対策

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相続トラブル事例

ケース5 無責任な顧問税理士やアドバイザー(ポイントを解説)

ポイント1顧問だから味方、税理士だから専門家とは限らない

 相続の専門家、節税の専門家というと、税理士が最初に思いつくと思います。しかし、Eさんの例のように、税理士であってもアテにならない人もいます。これは税理士の性格や仕事に対する姿勢にもよりますし、その税理士の得意分野にもよります。

 税理士ならばどの人も相続の専門家だと思われるかもしれませんが、現実は違います。税理士にも得意分野・不得意分野があるのです。

 現行の税の体系には3つの分類があり、それぞれに専門性が分かれています。

  1. ①所得課税……法人税や所得税のように、個人や会社の所得に対する課税
  2. ②資産課税……相続税や固定資産税など、資産に対する課税
  3. ③消費課税……消費税や酒税、たばこ税など、物品の消費やサービスの提供などに対する課税

 ほとんどの税理士は「所得課税」か「消費課税」を扱う仕事がメインです。病院や会社の顧問税理士として働いている人たちは、特に「所得課税」の専門家になります。大きな仕事として、会社や個人に代わって中間報告書や期末の決算書を作ったり、確定申告書を作成したり、年末調整を行ったりしています。経営改善のためのアドバイスや補助金などの申請の手続きなども得意です。

 しかし、彼らは「資産課税」についてはほとんど手がけたことがないでしょう。知識としては知ってはいても、実際の案件を手がけた経験はまずないといえるほどです。医者が内科、外科、精神科などの専門に分かれているのと同じなのです。

 ちなみに税理士試験では、所得税法と法人税法については試験科目が必須ですが、相続税法は選択科目のうちの一つとなっています。つまり、相続案件に対応できるほどしっかりとは学んでこなかったという税理士も多く存在するのです。

 相続や承継というのは、とても個別性の強いものです。家族構成やそれぞれの人間関係、資産の種類や額や内容、病院の形態や規模、住んでいる地域、相続・承継で目指すゴール、そのときの法律や制度など、さまざまな条件・要素によって相続や承継の形は異なってきます。家庭ごとに相続・承継があるわけですから、一度や二度の経験だけでは十分な対応はできません。

 さらに、顧問税理士であっても「自分のテリトリー内の仕事しかしない」「頼まれていないことはやらない」という人もいます。また、自分の仕事に精一杯で相続のことまで気が回らない人や、「必要なら頼んでくるはずだから」と受け身で待っている人、「個人のことに立ち入るのは失礼だから」とあえて関わろうとしない人などがいますが、いずれにしても相続はほったらかしにされてしまいます。

 資産家になると、「アドバイザー」と名乗る人たちがいろいろと寄ってきます。相続のお手伝いを、節税のアドバイスをと言って、さまざまな提案をしてくれると思いますが、すべての人が良心にもとづいて動いているとは限りません。表面上は「あなたのため」という顔をして、心の中では舌を出し、「自分のため」に動いている人も実際に存在します。もちろん、本当に「あなたのため」に動いてくれるアドバイザーも多くいます。むしろ、そういう人のほうが多いとは思うのですが、悲しいことに一部、悪質な人がいます。資産家になればなるほど、そういう善くない性質の人たちが集まって来がちですから用心するに越したことはありません。

 医師は医業を真面目にやって来た人たちなので、世間知らずになっていることがあります。世間ずれしていない分、とても純粋で素直なので、相手を疑うことをしない人もいます。税のことやお金のことに無頓着なうえに、相手の話を信じてしまいやすいために、良くないアドバイザーに引っかかって〝いいカモ〟にされているケースが非常に多いのです。自分が騙されやすい立場にいると自覚するだけで、用心深さが変わってくると思います。「スムーズに相続対策・承継対策を進めたい」「円満に相続・承継を成し遂げたい」と願うのであれば、やはりその道に精通した〝本物のプロ〟〝本物の味方〟を見つけなくてはなりません。

ポイント2相続の成功のカギは、開業医自身の情報収集と取捨選択

 相続・承継に向けて、これからみなさんは情報を集めることから始めることになります。どこにどんな情報があるか、誰が多くの情報を持っているか、有益な情報はどこに行けば手に入りやすいかなどを調べていくことになるでしょう。

 今はインターネットが普及し、日本のどこにいても情報が手に入るといわれています。たしかにインターネットがなかった時代とは比べ物にならないくらい、多種多様な情報が高速で手に入るようになりました。しかし、依然として「地域による情報格差はある」と私は感じています。

 私は九州・大分の出身で、その縁もあって地元の開業医の方々の相談に乗る機会があるのですが、一般的に行われている節税テクニックを話しても、「初めて聞いた」「うちの公認会計士はそんなこと教えてくれなかった」という反応がしばしば返ってきます。

 これが東京であれば「それくらいは知っている」「どこかで聞いたことがある」などと異なる反応が返ってきます。情報を知っていても、正しく理解しているかどうかや、正しく活用できるか否かは別問題ではありますが、少なくとも都会では情報が〝向こうから集まって〟きます。専門家の数も多く、あちこちでセミナーや勉強会が開かれていますし、開業医同士のサークルなどもたくさんあって、情報交流が盛んです。

 都会に比べると、地方は専門家の数も本当に少ないですし、セミナーや勉強会などの開催機会も少なくなります。開業医サークルに参加しようと思うと、都会まで出ていかなくてはなりません。地方では情報を〝自分から求めて〟いかなければならないというハンデがあるのです。

 相続・承継の問題は日本中どこででも起こっているのに、地方には有益な情報が入ってきにくいというのはとても不公平です。しかし、嘆いていても解決しません。地方に住む人は、「じっと待っていると時代に取り残される」くらいの危機感を持って、自分から積極的に情報集めに動いていかなければなりません。

 一方で、都会には情報が多く集まってくることによる弊害もあります。情報が多すぎて目移りしてしまうとか、自分に合わない情報を選んでしまうといったことが起こってきます。あるいは、無数にある情報のどれを信じていいのか分からないとか、紛れ込んでいるウソの情報に騙されるなどの危険性が高まります。情報のなかにはもちろん本当のものもありますが、上手に化粧をして本物っぽく見せたウソの情報もたくさんあるのです。

 都会にいる人ほど、こうした有象無象の情報のなかから、本当に正しい情報はどれなのか、自分に最もふさわしい情報はどれなのかを選択する目が必要になってきます。

 相続や承継という初めての世界に踏み込むには、情報力が大きな武器になります。しっかりアンテナを立てて情報感度を高めてください。そして、後悔しない選択ができるよう、たくさんの情報に触れて取捨選択のセンスと勘を磨いていただきたいのです。

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