医師一家の生前対策

おわりに

 本書を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 私は銀行員時代の30歳の頃から、相続に関係する業務に携わってきました。その経験から学んだのは、相続では似たようなケースはあっても全く同じケースはないということです。お客さまそれぞれで抱えているリスクが違い、それをカバーするベストな対策も異なります。だからこそ、オーダーメイドで相続対策を組み立ててくれる良きパートナーが必要です。

 当社も多くのお客さまの多種多様な問題に対応すべく、社内に税理士・社労士・行政書士を備える体制作りを始めました。

 まずはファイナンシャルプランナーである営業がお客さまとの信頼関係を構築し、相談相手となります。その後、社内の専門家(税理士・社労士・行政書士)がお客さまの持つ潜在的なリスクを顕在化し、問題点を明確にしていきます。明確になった問題点については、社内とお客さまとで共同して問題解決策を検討し、当社で対応できる対策とできない対策を仕分けます。この時点で、お客さまの将来設計の青写真が完成します。

 その後は設計に合わせて、社内でできる対策については精一杯のサポートをさせていただきます。できない対策については、外部の専門家の中でも実力と実績のある専門家を探し、お客さまに引き合わせます。

 単に専門的な力が優れているだけでなく、お客さまとの相性も考慮して「この人ならば任せられる」と思える専門家を紹介するためにも、日頃からお客さまとの密な関係づくりを心掛けています。また、一度関わったお客さまとはその後20年、30年……と長くフォローさせていただきます。

 当社では、〝お客さまとの関係を200年続ける〟ことを目指しています。お客さまご本人だけでなく、そのお子さんやお孫さん、さらにその先々までも〝人生の伴走者となって〟フォローしていくのが理想です。

 「家」や「クリニック」を大事に次世代へと繋いでいくためには、相続対策や生命保険契約、資産運用などを長期的なタームで組み立てていく必要があります。そのためには、その場かぎりではなく、超長期の視点に立ったお付き合いが重要です。また、そのくらいの期間フォローしなければ、どこかで対策が途切れて空中分解したり、片手落ちのプランになったりしてしまいます。

 当初は私一人で始めた会社でしたが、お客さまと長いお付き合いができるようにと考え、優秀な社員を増やす方向にシフトしました。私がいなくなった後も会社が続いて行かなくては、お客さまの財産を守る責務を果たせないからです。読者の皆様が社会のためにクリニックを存続させていくのと同じように、私もお客さまのために、会社を存続させていかなくてはなりません。

 相続といえば専門家に相談と考えますが、たいていの場合は問題が発生してから税理士などを探すでしょう。しかし、それでは付け焼刃であったり後手に回った対策になりがちで、満足な効果は得られません。問題が起こる前に対処ができたり、被害を最小限に食い止めたりすることが大事だと思います。

 当社の強みは予防に重点を置いている点です。病気でいえば、重大な病気になったときに手術の上手なドクターにオペをしてもらうことも大切ですが、もっといえば重大な病気にならないことが一番です。その予防を、私たちがお手伝いしていきます。

 相続対策は富裕層にだけ必要なわけではありません。資産の規模や額にかかわらず、どの開業医家庭にも必要なものです。顧問税理士を雇うほど大きなクリニックではないとか、専門家に頼むとお金がかかるからと言って、相続対策を放置しているご家庭も多くあると思いますが、当社は小規模なクリニック開業医の方々にもお気軽にご相談いただける存在でありたいと思っています。

 「具体的にどんな相談をすればいいか分からない」という方もいらっしゃるかもしれません。

 たとえば、祖父母の相続が発生した後、不動産の名義を変更する登記が終わっていないケースはよく見受けられます。放置しておくと、次の相続の際に利害関係者が増えて複雑になるので、トラブルになりがちです。名義変更が終わっていないために、住宅を建て替える際の住宅ローンが組めなかったりするケースもあります。「土地の名義変更なんて些細なことは相談しにくい」「こんなつまらないことを相談してもいいのだろうか」などと思わずに、気になることは何でも相談していただければと思います。

 また、病院や一般企業での事業承継や相続対策が必要だということは、多くの金融機関やコンサルタントから聞くと思いますが、実はその前に、社内規定や退職金規定といった労務面の見直しなど、やるべきことは多々あります。ご本人が気づきにくいリスクについては、こちらからも「これはできていますか」「法律や条例が変わりましたが大丈夫ですか」などとお声掛けすることもできます。

 開業医一家の相続は、何をおいても第一にパートナー選びが重要です。複雑な開業医一家の相続を高い場所から俯瞰し、全体を把握しながらコーディネートしてくれるパートナーをぜひ探してください。本書が読者のあなたとの出会いのきっかけとなったり、相続について考えるきっかけになったりできれば幸いです。

 読者の皆様の円満な相続実現とクリニックの永続を祈念しております。

平成28年5月
井元 章二

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