医師一家の生前対策

第4章弁護士、FP、相続診断士……
産と家族の状況に合わせた、
相続のプロの活用術

適材適所で専門家を使い分けるコンダクターが不可欠

 相続では、資産税、不動産、保険、事業承継、金融、遺言など実に幅広い問題に対処しなくてはいけません。しかも開業医の相続の場合は、ここに医業への理解や知識も必要になってきます。これをすべて一人のプロで網羅することは不可能です。

 ですから、相続税の申告手続きや節税については税理士にお願いし、家族間の揉め事については弁護士にお願いし、不動産については不動産鑑定士にお願いし……というように、ポイントごとにその道の専門家を頼るのが賢いやり方といえます。

 ただし、彼らはお互いのテリトリーを侵さないよう、専門性に特化した仕事をしていますから、どうしても単独での動きが多くなってしまうものです。不動産一つにしても、税理士は節税に主眼を置き、不動産鑑定士は資産としての活用を優先し、弁護士は家族間での揉め事が起きないことに注力して対策を進めようとすると、各自で動きがバラバラになり、相談しているほうもいったい誰を信じて任せればいいのか分からなくなってしまうのです。

 オーケストラでいえば、ピアノとトランペットとバイオリンが、それぞれ勝手に音を奏でるようなもので、これでは調和のとれた美しい音楽は生まれません。

 バラバラになりがちな専門家同士の間をつなぎ、全体の調和を取りながら連携を図り、相談者にとって一番理想的な対策を考えてくれる「指揮者役(コンダクター)」が相続でも必要です。

 コンダクターとして最もふさわしいのは、ファイナンシャルプランナー(FP)だろうと私は考えています。特に生保系のFPはお客さまの情報を深いところまでつかんでいることが多く、長いお付き合いになることが多いからです。

 保険の提案をするときも、いきなり商品を売りつけるわけではなく、お客さまの経済状況や家族関係、心配事、人生で何を一番守りたいと考えているかなどを丁寧にヒアリングしてから、「この商品なら希望をかなえられる」「この方法ならリスクに耐えられる」というものを選んで提案していきます。

 また、保険は売って終わりではなく、そこからが始まりであり、事あるごとに「今困っていることはありませんか」「以前から何か変わったことはありませんか」と声をかけ、何かあったらその状況に合わせて保険を変えるなどの関わり方をしていきます。すると、おのずと10年、20年、30年という長い付き合いになっていくのです。深い関係になると、お客さまの趣味から休日の過ごし方、お酒のたしなみ方まで全部知っていて、家族に言えない打ち明け話を相談されるなど、まさに人生のパートナーです。

 こうしたファイナンシャルプランナーの立ち位置は、「相続の相談窓口」として最適といえます。ファイナンシャルプランナーがコンダクター役となって、信頼のおける税理士や弁護士を適材適所で配置することができれば、理想的なオーケストラができるものと確信します。

 私のモットーとして、「お客さまのお金に関する相談にはすべて乗る」というのがあります。その実践として、納税や遺産相続、事業承継など、お金が関わっている問題全般の相談に乗れる体制を整えています。具体的には、社内に税理士、行政書士、社労士などを育成し、あらゆる側面からお客さまをバックアップできるようにしています。

 これはお客さまの財産を守るためには、私が死んだ後に発生する相続案件にも対応できなくてはならないという理由からでもあります。「私が死んだら、後のことは知りません」というのでは、あまりにも無責任でしょう。

 また、「お客さまの利益最優先で考え、お客さまを守る」というのも、もう一つの私のこだわりです。お客さまの役に立たないと思えば保険をすすめることはしませんし、逆にお客さまの利益になると思えば、私自身の利益にはならなくても、さまざまなサービスを提供しています。

 保険販売に専念すれば一時は利益が大きくなるかもしれませんが、お客さまは別に私から買わなければならない理由などありませんから、そのうち離れていくでしょう。では、「私でなくてはできない仕事は何か」と考えたとき、私はお客さまに寄り添うことだと思いました。お客さまの心に寄り添った結果、おすすめできる商品があるのなら提案すればいいし、なければ、それはそれで仕方がない。長く付き合っていくなかで、いつかお役に立てる場面がくればいいという思いで、いつも相談に乗らせていただいています。

キーワードで検索

ex) 医師、相続、資産、テクニック、フィナンシャル

Page Top