医師一家の生前対策

第2章莫大な相続税で破産、
子どもの跡継ぎ争いで家族崩壊……
医師一家を襲う悲劇 5つの事例

相続税は現金で一括納付が原則

 相続税の納付は、「相続発生から10カ月以内」に「現金で一括納付する」というのが原則です。

 納付は、税務署もしくは金融機関、郵便局の窓口で行うことができます。納税ができなかった場合は、次のようなペナルティーが課せられます。

申告だけして納税ができない

 延滞税という利息がかかります。納期限の翌日から2カ月以内なら、「年7・3%」と「前年の11月30日の基準割引率+4%」のいずれか低いほう。納期限から2カ月を超えると年14・6%。

申告をせず、納税もしない

 無申告加算税がかかります。申告期限から2週間以内に自主的に申告すれば0%、それを過ぎると5%です。税務署に指摘されて申告すると15%。納付税額が50万円を超える部分に対しては20%。

税金を誤って少なく申告・納税した

 自分で気づいて申告し直せば0%の場合もありますが、税務署から指摘されて申告し直した場合は、過少申告加算税10%がかかります。「期限内に申告した税金」または「50万円」のいずれか多い金額を超える部分に対しては15%。

意図的に税金を少なく申告・納税した

 35%の重加算税がかかります。

申告せず、しかも証拠書類を偽装するなど悪質

 40%の重加算税がかかります。

 納税を金銭で一括で行うことが難しい場合もあるでしょう。そういうときは、一定の要件を満たせば①延納および②物納の制度が適用できます。

①延納

 延納とは、相続税を分割で納める方法です。延納できる期間は原則5年以内です。

 相続人は、相続で取得した財産を売却するなどして納税資金を調達することになります。しかし、売却可能な資産が不動産くらいしかなく、すぐには売却できないというケースでは、最高20年まで期限を延長することができます。

 延納を受けると、利子税を負担しなければなりません。利子税は、延納する期間によって年3・6~6・0%となっています。

②物納

 物納というのは、不動産などの物品で納める方法です。延納でも納税ができない場合に、一定の要件を満たせば認めてもらえます。

 土地で物納をしようとするときは、相続税評価額での扱いとなります。市場での取引価格(時価)が1億円の土地を物納しても、相続税評価額が6000万円であれば6000万円を納めたことにしかなりません。

 土地だけでなく建物や車や貴金属などの動産も、たいていの物品は取引価額に比べて相続財産評価額が低くなります。いったん時価で売却してから現金で納税したほうが、節税になるケースも多々あります。

 物納を受けた場合も延納と同じく、納付するまでの期間に応じて利子税がかかります。延納、物納を申請したい場合は、相続税の申告期限までにその手続きをとらなくてはなりません。

 また、手続きをしたからといって、すべてが認められるわけではありません。延納、物納ともに、以前より承認されにくくなっています。昔は「子どもの学費として使わなければならないので、このお金は納税に充てられません」という

 よく調べもせず「どうせ延納か物納かすればいいや」とタカを括っていると、税務署から否認を受けて痛い目を見ることがありますから、勝手な思い込みは禁物です。

 延納や物納は、やれる対策はすべてやったけれどもほかに方法がなく、しかたなく選択するものと考えてください。まずは現金での一括納付を目指して、あらゆる手立てを講じていく必要があります。

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