医師一家の生前対策

第2章莫大な相続税で破産、
子どもの跡継ぎ争いで家族崩壊……
医師一家を襲う悲劇 5つの事例

相続人になれる人や順位は民法で決まっている

 民法では、相続人になれる人、すなわち法定相続人が定められています。

 また、相続人になる順位も決まっています。被相続人の配偶者は常に相続人になりますが、それ以外は優先順位の高い順です。順位が高い人が存在すれば、順位の低い人は相続人になることができません。

 第一順位は、直系卑属(被相続人の直系で下の世代)です。まず、子がいればその子が相続人になります。養子でもなれます。婚姻関係にない間の子でも、認知を受けていれば相続人になりますが、認知を受けていない非嫡出子は相続人になれません。子が死亡している場合は、孫が相続人となります。

 相続の相談に乗っていると、ときどき「私の財産は子ではなく孫に相続させたい」と言う人がいます。相続発生時点で子が存命していれば、その子を飛び越えて孫に相続させることは絶対にできません。孫に持たせるはずの財産は子に渡ってしまいますので、被相続人の狙い通りにいかないことになります。もし孫に財産を継がせたいのであれば、相続ではなく贈与・遺贈という方法を採らなくてはなりません。

 遺贈というのは、死後に遺言によって財産を特定の人に贈与する方法です。たとえば、「私が死んだら孫に△△をあげる」というように遺言書に書いておくと、その財産が孫に渡ります(遺留分を侵害しない範囲であることが条件です)。自分の死後に、法定相続人以外に財産を渡したい場合は、遺言書の作成が非常に重要になってきます。

 第二順位は、直系尊属(被相続人の直系で上の世代)です。第1順位の相続人がいない場合は、父母が相続人になります。父母が死亡している場合は、祖父母が相続人となります。

 第三順位は兄弟姉妹です。第2順位もいない場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹が亡くなっていれば、その子(甥や姪)が相続人となります。

 また、相続人に代わって孫や甥、姪が相続人になることを代襲相続といいます。孫は曽孫、玄孫……と何代でも代襲することができますが、兄弟姉妹の場合は、甥・姪となります。

遺産分けの目安となる「法定相続分」

 相続人が複数いて遺産を分ける場合、それぞれの相続する割合を「相続分」といいます。被相続人が遺言で相続分を指定したり(指定相続分)、相続人が話し合って決めたり(遺産分割協議)できますが、基準となる相続分は民法で定められており、これを法定相続分といいます。

 法定相続分は配偶者の有無で大きく変わってきます。

①被相続人に配偶者がいる場合

  • 相続人が配偶者のみ……すべて配偶者。
  • 相続人が配偶者+子……配偶者が1/2、子が1/2。
    子が複数いる、つまり相続順位が同列の人が複数いる場合は、同列の人たちでの頭割り。たとえば子が3人なら、1/6ずつ。
  • 相続人が配偶者+父母……配偶者が2/3、父母が1/3。
  • 相続人が配偶者+兄弟姉妹……配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4。

②被相続人に配偶者がいない場合

  • 被相続人に子がいる……すべて子。
  • 被相続人に子がおらず父母がいる……すべて父母。
  • 被相続人に子も父母もいない……すべて兄弟姉妹。

 法定相続分はあくまでも目安ですので、必ずしもこの通りに分けなくても構いませんが、遺留分を侵害するような分割にすると争族が起こりやすいため、慎重になる必要があります。

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