医師一家の生前対策

第2章莫大な相続税で破産、
子どもの跡継ぎ争いで家族崩壊……
医師一家を襲う悲劇 5つの事例

故人の財産すべてが相続の対象になる

 相続では、被相続人が死亡時に所有していた財産のすべてを相続人が引き継ぐことになります。プラスの財産(積極財産)もマイナスの財産(消極財産)も、〝金銭に見積もることができるものはすべて〟相続の対象です。日本国内に所有している財産はもちろん、海外に所有している財産も含まれます。

 プラスの財産には次のようなものがあります。

  • 不動産……宅地、家屋、事業用地、事業用建物、畑、農地、山林、店舗など
  • 不動産上の権利……借地権、借家権、定期借地権など
  • 金融財産……現金、預貯金、出資持分、有価証券、手形債権、株式、貸付債権、公社債など
  • 動産……車、家財、宝石、貴金属、書画、骨董など
  • その他……ゴルフ会員権、電話加入権、著作権、特許権など

 マイナスの財産には次のようなものがあります。

  • 借金……借入金、買掛金、手形債務など
  • 医療機器のリース
  • 債務保証……連帯保証など
  • その他……未払い費用、未払い利息、未払い医療費、預かり敷金など

 また、被相続人の死亡に伴って相続人のもとに入ってくる財産は前述以外にもあり、「みなし相続財産」としてプラスの財産に含まれます。

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 みなし相続財産としては、次のようなものがあります。

  • 死亡保険金(生命保険金・損害保険金)
  • 死亡退職金、功労金、弔慰金(一定額を除く)
  • 生命保険契約に関する権利
  • 定期金に関する権利(個人年金など)
  • 遺言によって受けた利益(借金の免除など)

 これ以外にも、「相続開始前3年以内に被相続人から暦年贈与された財産」や「相続時精算課税を用いて贈与された財産」も課税対象になります。

 現金や預貯金は額面がそのまま金銭的価値になりますが、土地や建物、出資持分などは通常、時価で換算することになります。ただ、時価といっても曖昧なため、課税の公平という観点から、実務上は財産評価基準に従って評価をします。

 土地の評価法には、①路線価方式と②倍率方式があり、より重要になるのが路線価方式です。

①路線価方式

 路線価というのは、道路に面する宅地の1㎡当たりの評価額のことです。道路ごとに1㎡当たりいくらと値段が決まっていて、これに地積を掛けることで、その土地の評価額が求められます。たとえば、路線価20万円の土地が50㎡あれば、20万円×50㎡で1000万円という計算になります。

 路線価は毎年変わり、7月1日に全国の国税局・税務署で公表されます。国税庁のホームページを開けば、誰でも見ることができます。参考までに、全国の路線価トップは、30年連続で東京の中央区銀座5丁目の文具店「鳩居堂」前です。平成27年度は、1㎡当たり2696万円でした。

②倍率方式

 もう一つの倍率方式は、路線価が定められていない地域の評価方法で、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価します。

 建物の評価は、固定資産税評価額をそのまま適用し、出資持分の評価は、取引相場のない株式の評価法に準じます。

 どこの家庭で相続が起こっても、遺産分割協議に一番時間を割くことになるでしょう。話し合いの時間が十分に取れないがために、遺族間で不満が残ったり、争族が起きたりするケースが多い部分だからです。速やかに分割協議に入れるようにするためには、話し合いのベースとなる相続財産を確定しなくてはなりません。そのためにも、財産のリストアップを早い段階で進めておくことをおすすめします。

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