医師一家の生前対策

第2章莫大な相続税で破産、
子どもの跡継ぎ争いで家族崩壊……
医師一家を襲う悲劇 5つの事例

病院解散・廃院は地域全体を巻き込む大問題

 Dさんは息子からの想定外の承継拒否に遭って、危うく後継者不在になってしまうところでした。一時はDさんも「自分が続けられるところまで続けて、死んだら病院は閉じる」と覚悟を決めていました。

 最初に紹介したAさんもそうでしたが、病院を閉じるということは、世の中にとって実は開業医自身が考えているより、ずっと大きな問題です。

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 都会なら近くに別の病院があるかもしれませんが、田舎に行けば病院の数は減ります。地域に1軒あるだけで、その次に近いのは車で20分以上離れたところという町村も多いと思います。そういう地域では、「そこに病院がある」「何かあったら駆け込める」ということが、人々にとってとても大きな安心材料になります。

 特に、これからはますます少子高齢化が進み、ひとり暮らしの老人が増えていきます。今まで歩いて通っていた病院がなくなると、彼らは車やバスや電車で遠くの病院まで行かなければなりません。若い人ならいざ知らず、高齢者にとっては大きな負担となるでしょう。

 ただでさえ「病院にかかりたいけれど諦める」という医療難民が増えていくことが懸念されているのです。後継者不在で病院を潰してしまうことで、こうした問題に拍車をかけてしまうことになります。

 病院はもちろん開業医のものではありますが、それと同時に〝地域の財産である〟ということをいま一度、心に留めていただきたいと思います。

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